I Can’t Stop Loving You

 先代の230セドリックで寒い冬の日の早朝、時間のない中暖機もおざなりに出勤しようとしたら自宅の目と鼻の先でATが壊れたのが今からほぼ15年前のことでした。
 突き詰め出したらキリがない旧車の世界、大した給料もらってるわけでもない月給生活者の身では当初から運転に係わる部分が壊れたら(故障したら、ではなく)そこでおしまいにする方針で乗っていくしかなかったのですが、それにしてもわずか3年ちょっとで廃車にしたのはちと早まったな、とは今でも思い返すことが時々。
 だって小学校の頃「西部警察」で画面の中を所狭しと弾け回っていた(文字通り)覆面パトカーの姿に心の琴線をすっかり鷲掴みにされた時から欲しかったんだもの。

 それはそれとして。


 想定外に短期間でそんなことがあって割といろいろ萎えてしまったのですが、通勤するのに足は要るし、と言って今の(=当時の)車で欲しいと思うものは無いし、そもそも新車なんかまだまだ手が届かない状況で導かれたのが、今乗ってるWY30だったのでした。
 大人の事情で5ナンバーサイズに納まることがまず絶対条件で、230でトランクの雨漏りを解決できずにでさんざん苦労した経験からワゴン車体、時折ある横浜-福井往復が負担にならない走行・居住性能、となると自ずと選択肢は限られてくるものですが。

特捜最前線 OP 投稿者 matsuden

 Y30系列にしても決め手は刑事ドラマ「特捜最前線」で、西部警察のようなお子様向けの派手さとは真逆の、落ち着いた雰囲気が魅力と言えましょう。今こういう堂々とした車ってほんと無いよなぁ。特に5ナンバーで。
 税制上は5ナンバーのメリットはほぼ無くなったものの、インフラが往々にして5ナンバーサイズを基準に整備されている以上、そこを意識したラインナップはあって然るべきだと思うのですがね。
 競合するクラウンに引きずられて3ナンバー化して、肥大化したボディサイズをデザイナーが持て余すようになった時、セドリックという車種は終わった。そう僕は見ています。「走る6畳間」のアイデンティティを捨ててはならなかった。

 さて。

 当時普及し始めていたネットでの中古車探しですぐ見つかったのは、バンパーの四隅が全部きれいに擦ってあって、ご丁寧にもルーフキャリアの取り外しにしくじって屋根の塗装も下地まで削られた個体。それでも結構強気の値がついていたのは、整備記録完備でロクに走行距離がついてなかったからでしょうか。

 さていざ納車されてみると見てくれのボロさ加減とは裏腹に、まあよく走る走る。初の車検を受けて少し経つまで、6気筒あるうちの1本プラグが死んでて機能していなかったことにディーラー含めて誰も気付かなかったくらいでした。その前に長野の山越えでどうも速度が出なかった時は(大した山坂道でもないのに大人4人乗車で30km/hも維持できないのはいくら何でも異常)、さすがに変だなとは感じましたが。前後の高速道路じゃ100km/h巡航も屁でもなかったのがまた不思議。
 プラグを直してから後は大した故障もなく今に至った次第です。普通ネットに挙がってる車自慢なんて言うと、どこが壊れたとかアレを取り換えたとかそういうもんと相場が決まっておりますが、うちのは無事之名馬、ノーマルこそ至高でずっとやってきました。
# だからと言って他人の乗り方にまで口を挟むつもりはないので念の為

 そんな中で挙げていくと、経年なりにはいろいろ下らない話も無くはなく。

・リアカーゴウインドウ

 特徴になる装備のわりにすぐ壊れる事でも悪名高いのがここ。うちも御多聞に漏れず数年でまずワイヤーが切れて閉まらなくなり、一度直したもののまた数年でモーターがおシャカになって閉まらなくなったのでした。その頃にはもう部品が出なくなっていて、使用頻度もそうない事から固定するように修正してもらいました。
 原因になったこの箇所の雨漏り自体が結構ポピュラーな不具合らしく(構造上水の侵入は避けられない)、うちでもちょっと雨が降るとその辺で溜まったビルジがジャブジャブ鳴る現象を出しておりました。この雨漏りについては何度となく、と言うよりディーラー行った時はほぼ毎回お馴染みのクレームと化していたのですが、持ち込む頃には直っている典型的なマーフィの法則が必ず発動したのも面白い。心配された錆の方は、パワーウィンドウのモーター・ワイヤーをダメにしたくらいでボディは何ともなかったのが不思議と言えば不思議でしたね。
 面白い装備だったのに、残念。

・リアゲートのダンパー

 オーソドックスなガスダンパーで、ガスが抜ければただの筒。製造後10年過ぎたあたりからだんだんその傾向が出てきて、特に寒い日なんかは開けて荷室に頭を突っ込むと自動的に閉まるオートクローズ機能を備えるに至っておりました(苦笑)
 これも一度は修理したんですが、それから10年経たずに再発してしまって、経年劣化とはこういうことなのだな、と理解するに至ったのでした。

・ドア内張り
 高級車(エヘン)らしく、ドアの下の方にはカーペット様の内張りがされているのですけれど、これが実は接着してあるだけで、ある程度時間が経つとだらしなく剥がれてきてしまうのでした。両面テープなりゴムボンドなりで貼り直せば済む話だから大事なし。

・ドアアームレストの磨耗

 これもY30乗りには常識。
 シートとのクリアランスがほとんど無いので、シートベルトを常用していると早い段階で角のところが削れてしまいます。こんなのむしろ設計上の瑕疵ではないかとも今の目で見たら思えるのですが、シートベルト着用が運転席だけでも義務化される以前の設計だから仕方が無い。 (^^;

・ホイールキャップ

 前オーナーはどういう乗り方してたんだかキャップの中心、納車段階からエンブレムの部分だけがっつり磨耗して樹脂部品が真っ白に変色していたのですが、どうしたものか思案しているうちに1枚飛ばしてしまいました。
 その頃にはもう部品としては調達不能になっていたのでヤフオクでセダン用のキャップを入手、以来ずっとそちらを履いています。好みの問題ではありますが、これはこれで悪くない。

・塗装の褪色

 5~6年くらい経ってから気が付いたんですが、運転席ドアだけどうも褪色の程度が違う。3,000kmも乗ってない前オーナーの時にぶつけた? (^^;
 だったとしてもローリングが強めの時に不規則なアタリ音を出すくらいで実害はないから良しとします。
 褪色ついでに付記しておくと各所のゴムパッキンも経年で切れてきています…が、10年以上野ざらし雨ざらしで屋根もない駐車場にほったらかしてきた割には随分持ち堪えた方ではないでしょうか。

 こうして書いてみると見てくれの部分ばかりで、運転にかかる部分にはまるで手を掛けていない。

 だって壊れないんだもん 😆

 強いて挙げるならだいたい5,000km~1年毎のエンジンオイル交換と2回に1回のオイルフィルタ交換、70,000kmくらいでやったATF交換くらい。でもこんなの、まともなディーラー点検なら黙っててもやってくれますよね。
 「10万kmを越えてからが勝負」と方々で放言して15年、今年の2月末にとうとうその10万kmを迎えた次第ではありますが。

 工業製品の宿命で、部品払底で維持できなくなる時は自作する腕がない限りいずれ訪れるもので、うちの場合は一昨年の暮れ頃から資金の目途も立ってきたしいよいよオールペンでもしようか、と重い腰を上げたあたりから情勢に暗雲が立ち始めたのでした。ディーラーが嫌がる、と言うよりはっきり断ってきたのは完全に想定の範囲内でしたけれど、その後他の鈑金工場を回っても片っ端から断られたのには参りました。
 どこも口を揃えていたのは「上から塗るだけならともかく、しっかりやるんならまず外装部品を全部はがさないといけない。はがした部品はもう新品では手に入らないし、後で元通りつけられるようきれいにはがす自信はない(から自分のところでは受けられない)」ってことでした。例によって武士の情けで店の名前は伏せますが「最新鋭の機器」だの「確かな職人技」だのといかにもな売り文句をネットで広告してても実態は大同小異で、変に淡い期待をかけた自分も甘かった。
 「約100万円」の概算見積を出した店も一軒だけありましたが、こことて結論は「その100万円でとどめを刺す危険の方が大」とのことで、こちらから丁重にお断り申し上げたのでした。今思えばそれでもいいからもう一押しても良かったかもしれない。

 とうとう近在の目ぼしい鈑金屋はほぼ回って万策尽きたのが去年の秋口。その頃にはこちらももうタオルを投げ込まれたような気分になってきておりまして、逡巡した挙げ句この1月中旬、区切りをつけました。
 「後の祭」とはいうものの、このところ身辺にも若干の変化があって休日に外へ遊びに出るどころか社会生活に支障を来すほど心身の余裕などすっかり無くなっていたのを、些か無理をしてでもまた出回るようになったのも、トリップメーターを意地でも10万km回してやりたかったのと、故障らしい故障もなくズボラな運転とメンテに耐えてくれた車への礼に、これまでに行った所をなるべくもう一度回っておきたい使命感からです。
 挙げだしたらキリがありませんが、そんな駆け足での巡礼も一区切りがつきました。特に意図したわけではありませんが、最後に回ったのが購入当時顔を出していた自動車愛好者の集いの会場だった台場の潮風公園だったのも、何やら因縁めいたものを感じないこともありません。
 お不動様になる前に、好きな車でやりたい事をあらかたやり遂げられたことは、素直に感謝したいと思います。

 ともあれ、新しい方の車にかかわる人には大変申し訳ないのですが、今後ここまで悩んだり未練めいたものを感じることはもう多分ないのではないでしょうか。
 1月中旬に成約して、3月末になっても納車日の目途立たず—僕は今、自分の選択を激しく後悔しています。
 いや、車種と仕様の選択に誤りはないと今でも確信していますが。
 40万円(但し、完治する保証はない)のATリビルドを蹴った230の時と同じように、買い換えの選択自体が正しかったのか、自己批判を止め処なく繰り返しています。

We’ll meet again,
Don’t know where, don’t know when.
But I know we’ll meet again, some sunny day.

Cheers.

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